手当て

 

 

人間の「気」と「血」の通り道を経絡(けいらく)と呼びます。

 

経絡が、合流したり、分岐したりする経絡上にある重要な部分を経穴(けいけつ)と呼びます。

 

言わば、「ツボ」です。

 

インドではチャクラとも呼ばれます。

 

中医学、漢方医学では、この「ツボ」に、鍼(はり)や、灸(きゅう)などで、刺激を与えることにより、体調の調整、諸症状の緩和をはかる鍼灸治療(しんきゅうちりょう)というものがあります。

 

鍼や、灸を使うのは、危険が伴うので、鍼灸治療を行うには、国家資格が必要です。

 

例えば、肩こりを治す「肩井」(けんせい)と呼ばれる「ツボ」があります。

 

首から肩先までの丁度、中間ぐらいにある「ツボ」ですが、鍼灸を禁ずると書かれたものも多い「ツボ」です。

 

この「ツボ」のすぐ下に肺があるため、深く刺入すると気胸を起こし、場合によっては患者を死亡させることがあるそうです。

 

また、この「ツボ」に鍼をすると、貧血を起こすことも多く、強い灸では、リンパ節に損傷を与える可能性もあると言われています。

 

日本では、「ツボ」というと、鍼を刺すというイメージより、押すというイメージの方が強いように思います。

 

危険を考えると、効果は弱くなりますが、良いことなのかもしれません。

 

                     経絡図の一例

 

この鍼灸治療ですが、もとは中国の中医学に由来し、経験的な知見により見出されたものなので、「ツボ」の実体や、作用の仕組みに関しては、解明されていません。

 

しかし、「ツボ」を刺激することによって、内臓反射等が起こっていることが研究により分っており、現在、WHOにおいても治療効果が認められています。

 

現在、科学的に分っている「ツボ」が効くメカニズムですが、「ツボ」を刺激すると、刺激が感覚神経に伝わり、感覚神経から、2種類の化学物質が放出されるそうです。

 

この、脊髄や脳までは伝わらず、神経信号伝達によって起こる反応を、「軸索反射」(じくさくはんしゃ)と呼びます。

 

2種類の化学物質は、「サブスタンスP」と、「CGRP]と、呼ばれます。

 

「サブスタンスP」は、「P物質」とも呼ばれ、組織間の水分や、栄養の移動などを円滑にして、リンパ球を増加させ、活性化させる働きがあると言います。

 

リンパ球とは、白血球の一種で、細菌、ウイルスなどの侵入者を殺す「抗体」を作る働きがある細胞です。

 

「サブスタンスP」は、11個のアミノ酸で構成された神経ペプチドだと言います。

 

ペプチドとは、決まった順番で、様々なアミノ酸が繋がってできた分子の系統群のことです。

 

                     ペプチド

 

また、「CGRP」は、血管など末梢の一次知覚神経の終末等に存在している、アミノ酸37個からなるペプチドです。

 

血管を拡張し、心拍数を減少させ、心筋収縮力を増やして、血液循環をよくする働きがあります。

 

つまり、道路を広げて、壊れた建物を修復する土木工事のトラックを、たくさん出動させるというわけです。

 

「ツボ」というのは体中にあります。

 

例えば、肺の「ツボ」が、足にあったり、手にあったりと、複数存在します。

 

体は、全て繋がっていて、どこからでも目的地に行くことは出来るのですが、特に、主要な都市には、高速道路が用意されているわけです。

 

この高速道路が「経絡」で、主要都市が「ツボ」(経穴)ということです。

 

患部に直接的に作用させるのではなく、間接的に作用させることが出来ます。

 

この「ツボ」とは、不思議なもので、病気のある患部に繋がる「ツボ」は、少し手で押すだけでも激痛が走ります。

 

反対に、健康な臓器に繋がる「ツボ」は、痛くも痒くもありません。

 

これは、悪くなっている部分を体が、教えてくれているんだと私は思っています。

 

激痛が走る「ツボ」も、押しているうちに、徐々に、痛みが無くなってきます。

 

これは、患部が回復している証拠なのだと思います。

 

つまり、痛くも痒くもない「ツボ」を、刺激するより、痛みのある「ツボ」を、刺激する方が有効だというわけです。

 

「自分の体の言うことに、耳を傾けてあげること」で、何処が悪いのかを知ることが出来ます。

 

 

人は目が疲れると、目頭を、人差し指と親指で挟む仕草をします。

 

これは、ここに、「睛明」(せいめい)と呼ばれる目の疲れを癒す「ツボ」があるからです。

 

また、頭痛がする時には、目の横のこめかみの辺りを、指で押さえたりする仕草をします。

 

これは、ここに「太陽」(たいよう)と呼ばれる頭痛を癒す「ツボ」があるからです。

 

無意識に、痛みを癒す「ツボ」を、刺激しているわけです。

 

 

人は誰でも、痛いところがあると自然に手を当てて、痛みを和らげようとします。

 

子供が、腹痛を起こしたら、母親は、お腹を手でさすってあげます。

 

膝を、家具にぶつけてしまったら、痛みのある箇所を手でさすります。

 

手が使えない動物は、舌で舐めてキズを癒します。

 

普段は意識しませんが、手を当てることが、痛みを和らげる効果があることを知っているからです。

 

「ツボ」は、体からの信号です。

 

「手当て」というのは、全ての病気を治す基本なのかもしれません。

 

「ツボ」の位置が分りやすいホームページがありましたので、載せておきます。

つぼ健康療法研究所