道草
クローバー アイルランドを代表する航空会社「エアリンガス」
クローバーという植物があります。
トランプでは、クラブと呼ばれ、農民の象徴、領土の象徴でもあります。
歴史上、有名なのは、アレキサンダー大王とも言われ、クラブのキングは、彼がモデルだと言われます。
チンギス・ハーンに継いで、もっとも領土を拡大した西洋の英雄です。
このクローバーのように葉が、3枚に分かれている草を総称して、「シャムロック」と言います。
アイルランドの国花で、アイルランド政府により商標登録されている植物です。
アイルランドという国は、一年中、草が青々としていて、「エメラルドグリーンの島」と呼ばれるそうです。
この「シャムロック」も、島の何処にでも見られる植物だそうです。
アイルランドという国は、ウィスキーを発明したケルト人の国で、三位一体の太陽の女神「ブリギッド」という神様を、信仰していました。
トリケトラの模様
その為、「3」は、ケルト人にとって特別な数字で、マーキス型を三つ重ねた三位一体を表す「トリケトラ」と呼ばれる模様を好んで用いました。
また、ケルト人はシーラ・ナ・ギグと呼ばれる自分の陰部を広げて見せる女性の像を門を守る魔除けとして用い、その陰部の形がマーキス型で表現されています。
432年ごろに、キリスト教を布教する為に、聖パトリックという司教が、「シャムロック」を使って、ケルト人の神様と、キリスト教の神様は、三位一体の同じ神様だと説明していたそうです。
キリスト教の三位一体とは、父と子と精霊(神とイエスと天使)が同じぐらい神聖なものだという教義です。
最近では、それに聖母を加えてはどうかという議論がなされる時があるそうです。
聖母とは、イエス・キリストの母、マリア様のことです。
この中で、唯一、聖母マリアは人間なので、人間を神様と同列に加えることに反対する人も多いようです。
賛成派の人は、聖母マリアが、神様よりイエスの母として、選ばれた特別の人間であり、「聖母の被昇天」(8月15日)(聖母マリアが、その人生の終わりに、天国にあげられたという信仰で、ローマ教皇ピウス12世によって正式に教義として宣言されたカトリックでの用語)を根拠に、神様と同列に加えようというものです。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 「聖母の被昇天」
話が脱線してしまいましたが、ケルト人にキリスト教を受け入れさせるために、この三位一体という説明がなされたわけです。
丸に十字の「ケルト十字」も、太陽を表す丸の「ブリギッド」と、十字の「キリスト」が同じ神様だという布教の為に生まれたものです。
ケルト神話には、様々な女神が登場します。
川の女神「ダヌ」、月の女神「アリアンロッド」、三位一体の女神でカラスの姿をした死神「モリガン」などです。
これらの女神は、全てブリギッドと同一の神様だとも言われます。
土曜の月夜に行われたと言われる魔女の集会サバトは、キリスト教側から見たケルト人の信仰で、「ダヌ」や「アリアンロッド」、「モリガン」などが「ブリギッド」より古い時代に信仰された神様であることから、元々は、太陽神ではなく月の女神だったのかもしれません。
ケルト十字
この聖パトリックの布教によって、アイルランドの国民の9割は、カトリックとなり、ケルト人の信仰した神様達は、妖精となって生き残りました。
ケルト人は、当時、たくさんヨーロッパにいましたが、フランスでは混血が進み、フランス人となっていったのに対して、イギリスでは、アングロ人、サクソン人が、ケルト人と混血しないように、国王によって法律で規制されました。
世界中に植民地政策が進められる中で、ラテン系のスペインやポルトガルなどが、現地の人間と混血して、同化していったのに対して、イギリスでは、現地の人間とは、決して混血しないという植民地スタイルが、決定されました。
そして、WASP(ワスプ)と呼ばれる人種差別が起こります。
WASPとは、W(ホワイト、白人)で、AS(アングロ、サクソン人)で、P(プロテスタント)が、人種的に優れているという差別で、当然、アイルランドのカトリックであるケルト人が、その対象とされ、差別されました。
清教徒(ピューリタン)のクロムウェルという極悪人によって、ケルト人は、大虐殺され、土地を奪われ、イギリス人の小作人として支配されました。
そのような差別がイギリスではあった為に、アイルランド人で、カトリックである、ジョン・F・ケネディが、アメリカの大統領になった時には、世界中の人が衝撃を受けました。
しかし、ケネディ大統領の暗殺という悲劇が起こりました。
アメリカは、アイルランドからの移民も多い国なのですが、アメリカにも、人種差別をする人達がいて、そういった人達の犯行じゃないかと言われています。
その後、同じく、アイルランド人のロナルド・レーガンや、黒人のバラク・オバマといったWASP以外の大統領が生まれました。
そういった面での、アメリカは、自由の国、多民族国家として常に先進的な国家だと感心します。
余談になりますが、ハンバーガーショップの「マクドナルド」は、スコットランド系ケルト人のハンバーガー屋で、「マック」とはゲール語(ケルト人の言語)で、「息子」という意味だそうです。
だから、マクドナルドとは、ドナルドの息子という意味になるそうです。
欧米では、クローバーを使ってキリスト教を広めた聖パトリックの命日(3月17日)に、市民が緑色の服を着て、パレードなどをして、盛大なお祭りをするそうです。
アメリカや、カナダのマクドナルドでは、聖パトリックの祭日には、「シャムロック・シェイク」という緑色のシェイクが販売されると言います。
味は、ミント味だそうです。
GHQのマッカーサーも、スコットランドからアメリカに移住したケルト人で、マッカーサーとは、「マックアーサー」で、アーサー王の息子という意味だそうです。
スコットランド国旗 聖パトリック旗(アイルランド)
スコットランドも、アイルランドも、ウェールズも、もともとは、ケルト人の国です。
どちらも「X」を、使用していますが、伝承では、キリストの十二使徒の一人で、ギリシャのアカイア地方で、「X」型の十字架に掛けられて処刑されたとされるアンデレという人のシンボルマークだそうです。
セントアンドリュークロスとも言うそうです。
また、アンデレは、イエスの前に、パンと魚を持った少年を連れてきて、食料を増やして、五千人に与えた奇蹟の話にも登場するようです。
この「X」ですが、ケルト人と、とても係わりの深いマークです。
ケルト人は、ドラゴンを信仰していました。
角の生えた蛇です。
ウェールズの国旗はズバリ、赤いドラゴンの図柄で、ケルト人にとって、ドラゴンは特別な存在だったようです。
聖ゲオルギウス十字 ユニオン・フラッグ
そんな中、ドラゴンを守護神とするケルト人に脅威を感じていたアングロ人、サクソン人の間では、聖ゲオルギウスのドラゴン退治の伝説が生まれました。
その聖ゲオルギウスの旗が、白地に赤の十字架です。
スコットランドと、アイルランドを統合して、ユニオン・フラッグが生まれました。
「X」(ケルトの宗教)を「十」(キリスト教)で統合するという意味なのかもしれません。
ユニオン・フラッグに、ウェールズの旗が入っていないのは、この時すでに、イングランドの一部として、統合されていたからだそうです。
ウェールズの旗