海苔
日本人の朝食の脇役として登場する海苔ですが、とても、いろいろな栄養素を含んでいます。
海苔のうまみの元は、「グルタミン酸」、「アラニン」、「グリシン」、「タウリン」などです。
ビタミン類が非常に豊富で、「ビタミンA」、「ビタミンB」、「ビタミンD」、「ビタミンE」、そして、「マグネシウム」、「リン」、「亜鉛」、「鉄」、「ヨード」、「フコダイン」までも含みます。
そして、一番、たくさん入っている栄養素が、「食物繊維」です。
海苔の約40%近くが「食物繊維」で、1枚の海苔にはみかん1個分、または、ごはん1杯半の食物繊維が含まれていると言われます。
「食物繊維」は、人の消化酵素によって消化されない成分の為、栄養学的には、長い間、役に立たないものと思われてきました。
ところが、研究が進むにつれ、腸内細菌との関係が注目されるようになり、現在では、「第6の栄養素」と呼ばれ、重要視されています。
「食物繊維」の効用として、脂質異常症予防、便秘予防、肥満予防、糖尿病予防、脂質代謝を調節して動脈硬化の予防、大腸がんの予防、その他、腸内細菌によるビタミンB群の合成、食品中の毒性物質の排除促進等が確認されています。
長寿地区住民の高齢者の「食物繊維」の摂取量と、腸内細菌を分析する研究結果から、「食物繊維」の摂取量が多いと、ビフィズス菌等の有用菌が優勢で、老人特有のウエルシュ菌などの有害菌が、抑えこまれていることが実証されたそうです。
さらにこの有用菌は、腸内腐敗防止、免疫強化、腸内感染の防御、腸管運動の促進といった作用のあることが分っています。
おにぎりに巻かれている「海苔」
日本人は、海藻を、日常的に食事の中に取り入れています。
海苔、ワカメ、ひじき、青のり、黒のり、昆布、もずく、寒天などです。
とろろ昆布のお吸い物もおいしいし、ご飯と一緒に食べる昆布の佃煮、ワカメの酢の物や、もずく酢なども、おいしいです。
海藻を食べる歴史も古く、縄文時代から食べられているそうです。
世界を見ると海藻を食べる民族は少数派のようです。
実際に、日本の納豆と、生卵、海藻が苦手で、食べられないという外国人も多いようです。
これには、「酵素」が関係しています。
人間の体内には、2種類の潜在酵素の「消化酵素」と、「代謝酵素」があります。
「消化酵素」は、食べ物の消化を助ける酵素で、唾液には「アミラーゼ」、胃液には「プロラーゼ」と呼ばれる「消化酵素」が含まれています。
「代謝酵素」は、体に取り込んだ栄養を、体中に送り、新陳代謝をしたり、有害物質などを、汗や尿として排出したり、体の悪いところを修復して免疫力を高める働きがあります。
お酒の強さは個人差がありますが、「代謝酵素」であるアルコール分解酵素を、体内にどれくらい持っているかによって変わります。
さて、栄養豊富な海藻ですが、細胞壁に含まれる「ポルフィラン」と呼ばれる硫酸多糖類が、非常に強固に海藻の細胞を守っている事から、内容成分を充分に吸収する事が出来なくなっています。
海に棲む一部の細菌は、「ポルフィラナーゼ」と呼ばれる特殊な酵素を持ち、「ポルフィラン」に作用して分解する事が出来ます。
細菌の一種である「バクテロイデス・プレビウス」は酵素「ポルフィラナーゼ」を作る遺伝子を持ち、「ポルフィラン」を分解する力を持っています。
最近の研究では、「バクテロイデス・プレビウス」が、日本人の腸内に特徴的に存在する事が判ってきています。
つまり、腸内に住む細菌によって、日本人だけ、海藻の栄養を、吸収出来るというわけです。
本来、「ポルフィラン」を分解できる酵素を持つのは、「ガラクタニヴォーランス」という細菌の特徴となっていました。
「バクテロイデス・プレビウス」が、「ポルフィラナーゼ」を作る遺伝子を獲得するようになった背景には、「ガラクタニヴォーランス」からの遺伝子の譲渡が行われた事が理由と考えられています。
海洋細菌として存在する「バクテロイデス・プレビウス」が、日常的に日本人が摂取していた海藻類に付着して体内に入り、腸内細菌として定着し、「ガラクタニヴォーランス」も同じように海洋細菌として摂取されますが、腸内細菌としては定着できず、両細菌間で遺伝子の譲渡のみが行われ、日本人の腸内で「ポルフィラン」の分解が行える環境作りに繋がったと考えられています。
外国人が、海藻を、おいしくないと感じるのは、体が、消化する酵素を持っていないからというわけです。
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昆布の佃煮